乾いた空気が一気に潤いに満ちた気がした。この世の果てに辿り着いたのか、ついに。どうも酔ってはいないみたいだ。むしろ文字通り覚醒の真っ只中にいる、俺は。
憶えているといえば憶えている。しかし記憶の断片には留まらないだろう。どこかで俺自身が拒否反応を示している事に気付くのに時間はかからなかった。果たして彼女はどうだろう。
俺は夢でも見ていたのだろうか。幸福とはかけ離れたエンディングを伴う、コンビニでも売ってそうな映画の、それも主人公にでもなった気分だ。全く吐気しか残らない。でももう吐く物もなにも残ってない、俺には。
霞みを掴もうとするが、掴んだその先には幻がいる。全くもっての堂々巡り。決して交わらない、永遠に届かない。俺の意思ではどうすることも出来ない。そもそも俺の意思はどこにあるというのか。意思を放棄したんじゃないのか。
大きな波の中に漂って、流されていたい。何か大きな力の歯車の一部と化していたい。その他大勢の代えの利く一員でありたい・・・のか、果たして。
終わりの淵に足を踏み入れたこの俺には、前に進むしか選択肢が残されていない。終わりの果てには何が待ちうけているのか、確かめざるを得ない。
今でも口をついて出てきそうなのを我慢できない自分がいる、少しでも気を許したら音になってしまう、リズ・・・と。
俺は思い出と心中する事に決めた。