まるで夢でも見ていたかのようだった。夢だったらなお良かったのだが。
皆は彼女をリズと呼んだ。エリザベスという名だと知ったのはずっと後のことだ。
交換留学生とは名ばかり。大学の代表とはよく言ったものだ。ここでは完全なる外様、ヨソ者だった。思っていたより言葉も通じないし、たいして面白いことも起りそうにない・・・はずだった。彼女を知るまでは。
「時化た顔してどうしちゃったの?お家に帰りたくなった?」ひどい訛りだ。まさか俺以上のヤツに出会えるなんてな、ここで。俺は顔をあげた。
顔は悪くない、むしろ美しすぎるといえた。ただ俺は感情を言葉に翻訳するのも苦手だった、例外もあるにはあるが。
「初めてだよ、君みたいな女性に出会ったのは。それにしてもひどいな、その訛り」
「ワタシも初めてだわ、初対面の人に顔以外でそんなに褒められちゃうなんて」顔は笑っていなかった。
「それほどうまくしゃべれるわけじゃないんだ、特に人を褒めることに関しては」
「あなたの国ではみんなそうなの?」
「国の問題じゃないな。俺の根っこの部分だ、多分に」
「変ってるわね、あなたって」
「やっと俺のことを褒めてくれたな」俺は一度目を閉じて言った。
「絶世の美女とは君のことを言うんだな、イヤ間違いない。初めてコトバの意味を知ったよ」
「やっぱりあなた変ってるわ、サイコーに。ビールでも飲もうよ」
つづく