あの人がキライだ。
毎日毎日仕事ばっかり。
帰ってくるのは日をまたぐのが常だし。
口癖は『疲れた、疲れた』こっちのほうが疲れるよ。というかもう嫌になってるし。
しゃべるのは最低限必要なことだけ。
まともな会話もない。
「あなたは仕事と私、どっちが大事なの?」なんて声をあげる事もあるけど、
決まって言うのは「両方、もちろん」
わかってないなぁ~。
そんな時に出会ったのが『CR必殺仕事人』だった。
右にある剣が開いておなじみのテーマソングが流れた。
衝撃だった。
まばゆいぐらいの光と音に包まれた。
「彼らが悪人と呼ばれる者を退治するのは人の情けを放っておけないからかな。」
でもこんなこと好き好んで誰がやりたいって思うかな。
そうか、どんなに泥臭いことでも誰かがやらなければならないし、
逆に見えないところで誰かがやってくれているから見た目には何も起こってないように見えるんだ。
ハッとした。
あの人が変わるんじゃない。
そのままでいてほしい。
そう思うようになった。
むしろ変わるのは私の方だった。
鋭利な言葉の刃を向けても受け流してくれたあの人。
そんな人に惚れたのは私だ。
お休みの日にずっと眠っているあの人を、外の連れ出すには私の工夫が足りなかった。
会話が少ないのは、私があきらめて話しかけるのを忘れていたんだ。
そうだ、あの人をおなかの底から笑わせてあげよう。
昔の人は言った。
「愛あるところに道あり、道あるところに愛あり」
今日から寝ずに待っていよう。
どんなに遅くに帰ってきてもあったかいご飯を用意しよう。
あの人を支えるのは私のごはんだけだから。
でも、寝入っていたら起こしてね。