「釣りって何が楽しいの?」
そんな質問はウンザリだ。
海に来る度に繰り返されるこのやり取り。お決まりの言葉を返すことにする。
「釣り人を見てる奴のほうが疑われるって、周りからはな」
只俺も同じだった。
俺も釣りはヒマ人のやる事だと思ってた。いつ釣れるかもわからないのに延々と、
しかも今日は一匹も釣れなかったよなんて笑顔で言ったり。めでてぇな~と。
しかし、それも彼女に会うまでだった。
人は幸か不幸か移ろいやすいみたいだ。
「そんな顔してたら釣れるものも逃げちゃうよ」
「この海も空も時間もひとり占めじゃん」
釣りの意味が分かった気がした。
釣り自体が目的ではなかったのだ。彼女と海に行くたびに確信に到った。
そんな彼女とはパチンコ屋にもよく行った。面白いからと。
なるほど、そういう事か。
釣りみたいなもんなんだ。ただ魚の群れを待つだけだから。
虹色の魚たちを今か今かと待ちわびる、それが心地よくなってくる。
でもさすがに当たりをひきたいな~と思うときには彼女が言う。
「そんな浅瀬には魚はいないよ、もっと沖にでなきゃ」
よしもっと潜ろうか、もっと深いところまで。
昔のひとは言った。
「逃した魚は大きいが、釣れた魚も捨てたモンじゃない」
そろそろコイツと虹色のサカナを見に行こう。
釣りの楽しさを教えてくれるはずだ、SPならばなおさらだ。