「7が揃ったら晩ごはんおごらせてあげる」
初めて打ったスロットの思い出は今でも色褪せない。
そう言って史朗くんが会話を遮りました。
やり方がなにも分からないまま打っていたら、
隣のとなりから女性の声が聞こえてきたと。
「それ~、入ってますけど・・・」
最初は違う人にしゃべりかけてると思ったが
どうも自分らしい。でも入ってるってどういう意味だ?
「入ってるって、何が入ってるんですか?」
それから二つ、三つ言葉を交わし
スロットのやり方みたいなものを教えてもらった。
只、その代わり自分のハートを奪っていった。
言葉にするには恐ろしい、彼女の容姿は。
自分の貧粗なボキャブラでは間に合わない到底。
それから同じ店の、同じ席で打つことに決めた。
次会ったら食事に誘うことも決めた。
でも、ほとんど毎日通ったが中々姿を現してくれない。
しかも左下の、あのランプが灯るたびに自分の想いを昂揚させる。
行くしかない、と。なおかつこの台は純粋に面白い。
虚飾に頼らずにシンプルに過ぎるゲーム性。
今か今かと待ちわびるアノ妖艶なランプ。
忘れた頃に耳に轟く確定音。
ただただ素晴らしい。
そんな時だった。彼女が現れたのは。
「うまくなったじゃん」
「俺夢中になるととことんですから。」言うが早いかランプ点灯。
行くしかない。
「ご飯食べに行きません?」
「じゃあそのボーナスがビッグだったらおごらせてあげる。」
俺のヒキはボーナスを引いたところで潰えた。
「またね~」昔の人は言った。
「強い男とは勝つ男じゃない、負けない男だ」
今でもあの店で打っている。あの日のリプレイを引くために。