--
「親友カズの視点から見た日記」
--
とある金曜日の深夜1時に、俺はジョンをラーメン屋に誘った。
前回のようなことがあった手前、誘おうかどうか迷ったが、
奴とも久しく会っていなかったし、俺自身花粉症気味だったため何か作るのも面倒で、
何より一人で食べるのも寂しい気がしたからだ。
メールを送るべく携帯を開き、操作する。
「今からラーメン、どう?」
確かこんな文体であったはずだ。
返事はすぐに送られてきた。
ジョン「マジで?いいの??」
何がだ。
悪い予感しかしなかったが、俺は昼から何も口にしていなかったということもあり、
15分後に着く旨を伝えると、ジョンは「うぃ~」とフランス人なんだか小島よしおなんだかよく分からない返事をしてきた。
そのメールには返事せず車に乗り込み、ハンドルを握った。
夜の京都を走りながら、俺はさっきのジョンのメールの意味を考えていたんだ。
「マジで?いいの??」
だから何がだ。
意味が分からないがとりあえず「ダメだ」とでも伝えておくべきだったか。
奴のことだ、俺の体調を気遣って、
「マジで?(こんな時間からラーメン)いいの??」
って意味で言っただなんてありえない。
あいつは俺が風邪をひいたり、花粉症で苦しんでいるのを見て笑うような奴だからだ。
生まれ変わったらあいつの上司に生まれ変わりたいと切に願う。
そして査定をガクンと下げてやりたい。
そんなくだらないことを考えているうちに、奴のマンションに到着した。
車に向かって歩いてくるジョンの足取りはしっかりとしている。
どうやら今日は酔っ払ってはいないようだ。
ジョン「お待たせ!」
それは俺のセリフだと思ったが、無視しておいた。
スーツ姿の俺を見てさらに口を開く。
ジョン「おっ?お仕事帰りかね?ご苦労!」
何様なのだ、こいつは。
終電まで働いていたことを伝えると珍しく気遣いを見せる。
ジョン「お前は本当に頑張り屋さんだなー!今日はいっぱい食べなさいよ!」
怪しすぎる。さては財布を持ってきていないパターンか?
また俺に奢らせる気じゃ・・・
ジョン「ほら!見て?財布買ったんだー。なかなかカッコ良くない?や!カッコいいって!」
俺の意見なんてお構いなしな質問に腹はたったが、財布を持ってきたことに安心し、
そんなこんなで俺たちはいきつけのラーメン屋に到着した。
入店すると俺たちはいつもの場所に座り、俺はいつものメニューを注文する。
ジョンはいつものメニューに加え、ラーメン用のトッピングセットとキムチを注文し、
なかなか豪勢な夜食を愉しむつもりのようだ。
この時点で俺は、ジョンの
「マジで?いいの??」
のことなんてすっかり忘れていたんだ。
最近の仕事の話や、お互いの休日の出来事を話し、
春になったら旅行に行こうなどとも話した。
お互い食べ終わったところで、当然店を出る雰囲気になった。
と、そこでジョンが何やら話し始める。
ジョン「俺は今日まで東京出張だった!」
何だ、一体。それがどうした。
ジョン「東京では、1泊の予定が3泊になった!」
選挙間際の演説者のような口ぶりだ。
ジョン「シャツだって、向こうで2着買った!」
そりゃ足りないからな、買うだろうよ。
ジョン「飲み物だって買ったし、お弁当も食べた!」
普通のことを堂々と言ってるだけじゃねぇか?
ジョン「俺が使っている銀行は○○銀行だ!」
聞いてねぇよ。
ジョン「東京には無事、○○銀行は無い!!」
へぇ、そりゃ下ろすの大変だな。
ジョン「手数料とか、取られたくなくない?」
急に同意を求めるな!つまり何が言いたい!?お前、まさか・・・
ジョン「というわけで、今俺の財布には200円しかありません!」
おまっ・・お前!財布が変わっても所持金が前回と同じじゃねぇか!!
ジョン「わははは!デジャブ?」
違うわ!金がないのにたんまり食いやがって!
ジョン「だってお腹空いてるじゃないですか!!」
偉そうに言ってんじゃねー!
ジョン「でも?どうする?本当に200円しかないから俺は払えないよ?ん?」
こ、こいつ・・・開き直りやがった。
ジョン「じゃぁ200円払ってやろうか?」
なんで上から目線?お前、最初っからそのつもりだったんだな!?
だからあんなメールを!
ジョン「まぁまぁ、今度奢ってあげるから。元気出してね?」
うっさい!バカッ!!
泣く泣く伝票をレジに持って行った。
店員さんが当然のように尋ねる。
「お勘定は別々ですか?」
そこで今日一番の元気な声をジョンが発した。
ジョン「いや!一緒で!!」
そうして一足早く外で待つジョンは自販機で缶コーヒーを買おうとしている。
俺は2人前の食事代を払いながら思った。
本当にデジャブかもしれない、と。
--
そんな友人に後日誘われ、
ファミレスでガッツリ御馳走するはめになったNEWジョンでした。
これもまた、デジャブかしら?