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終着駅を通りすぎて
2010.12.31

 押し潰された雑踏を突き抜ける、このスピード。絶望という名の感情に支配されつつあることに怯えている自分に気付くのに時間はかからなかった。

 ただその時間さえも霞んでいるのは気のせいか。はたまた頬をつたう滴によるものなのか。ほんの数時間前のことなのに、もう戻れない、取り戻せない。2010年は終わってしまったんだ。殊に俺にとってはなおさらだ。

 このスピードのなかでは何も考えることが出来そうもない。ただこのスピードに殉じるだけだ。想像力の枯渇か、思い出の衰退か。いや記憶の拒絶が正しいか。今の自分には何が正しいか、何が間違いかは問題ではないはずなのに。

 しかし何も考えないことが、その空白が、彼女で満たされるのはなぜだろう。どうして俺たちが別れる事になってしまったのか、そんなことはどうでもいい、本当に。ただ彼女の声が、この凝縮しつつある視界に突き刺さる。

 言葉にならない声だが、間違いない、彼女の声だ。

 彼女との仲、彼女の存在は置いてきたつもりだった。ただ思い出すことをいくら放棄したつもりでもこの耳自体に刷り込まれているんだ、きっと。

 だが信号で止まるたびに彼女の声は聞こえなくなってしまう。そして、スピードに同調するかのようにまた聞こえてくる。速度が増すにつれてより濃く鮮明に。

 そのうちブレーキを踏むことを躊躇し始めた。そして首都高にハンドルをきることになった。まるで回遊魚だな、俺。ブレーキを捨てて、このスピードの中でいるには格好だ。

 年が明けた。彼女も2010に置いてきた。何もかもが変わったんだ。そう、何もかもが。しかし、俺は回遊魚から抜け出せるのか。この高速を降りて2011と向き合えるのか。

 刻々と進む時間の流れという物が俺には理解できずにいた。いっそう右足を踏み込みながら。

Posted at 2010.12.31 in ひとりごと by カジコメント(0)トラックバック(0)
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