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哀しみの名残り、楽園の終わり
2010.08.24

 「君といるとビール進んじゃうね」

 「私とは関係ないと思うけど、ビールが進むのは」

 「いやいや楽しくて仕方ないよ。君といると」出切る限りの笑顔を作って言った。

 「私のおかげというより、わたしのせいっていうのは悪くないかも」

 逆もまた真実であって欲しいが、それを聞くのはやめにした。そばにいる彼女への気持ちが飛躍する。だがそれは今ではないはずだ。もう少しこのままで。ビールが時間を濃密にする。

 「まだ飲み足りない?」唐突に彼女が言った。この言葉の意味は。

 「飲まずにはいられないな、君といると」空の缶を振ってみせる。

 「飲み足りないというか話し足りないというかどっちだろ」

 「でも話をするには酔いすぎていないかしら、あなたも」そう言った彼女の目は恐ろしく艶を帯びていたように映った、俺には。

 「話をするには明るすぎない?」目だけじゃない、彼女自体が艶の塊だ。

 暗闇が突如訪れる。

 闇は世の中の物を全て美しく見せると聞いた事がある。あれはどうやら真実だったらしい。彼女を形容する言葉を俺は持ち合わせていない。

 そして触れ合う感覚はその視覚すら凌駕してしまうことも。

                                   つづく

Posted at 2010.08.24 in ひとりごと by カジコメント(0)トラックバック(0)
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