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哀しみの名残り、楽園の終わり
2010.03.26

 まるで夢でも見ていたかのようだった。夢だったらなお良かったのだが。

 皆は彼女をリズと呼んだ。エリザベスという名だと知ったのはずっと後のことだ。

交換留学生とは名ばかり。大学の代表とはよく言ったものだ。ここでは完全なる外様、ヨソ者だった。思っていたより言葉も通じないし、たいして面白いことも起りそうにない・・・はずだった。彼女を知るまでは。

 「時化た顔してどうしちゃったの?お家に帰りたくなった?」ひどい訛りだ。まさか俺以上のヤツに出会えるなんてな、ここで。俺は顔をあげた。

 顔は悪くない、むしろ美しすぎるといえた。ただ俺は感情を言葉に翻訳するのも苦手だった、例外もあるにはあるが。

 「初めてだよ、君みたいな女性に出会ったのは。それにしてもひどいな、その訛り」
 「ワタシも初めてだわ、初対面の人に顔以外でそんなに褒められちゃうなんて」顔は笑っていなかった。

 「それほどうまくしゃべれるわけじゃないんだ、特に人を褒めることに関しては」

 「あなたの国ではみんなそうなの?」
 「国の問題じゃないな。俺の根っこの部分だ、多分に」

 「変ってるわね、あなたって」
 「やっと俺のことを褒めてくれたな」俺は一度目を閉じて言った。

「絶世の美女とは君のことを言うんだな、イヤ間違いない。初めてコトバの意味を知ったよ」

 「やっぱりあなた変ってるわ、サイコーに。ビールでも飲もうよ」

                                 つづく

Posted at 2010.03.26 in ひとりごと by カジコメント(0)トラックバック(0)
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